2010年3月18日木曜日

塾という教育の場(トポス)

 一之瀬学『誰も教えてくれない[学習塾]の始め方・儲け方』(ぱる出版、2007)読了。 
 塾経営の難しさを知る。

 そこにあった一文。

この経営者は、そのノウハウが時代に合わず、通用しなくなったからこそ、生徒が減り続けているという現実には気づいていない。錆付いた過去の栄光にしがみつき、それを手放そうとしないからこそ、経営がうまくいかなくなっているのに、である。これは塾だけでなく、どの業種でも成功した個人事業者が最も陥りやすい自己過信の弊害である。(208頁)

 現実に対応し続けることの大切さを思う。
 塾は、学校のサブとして捉えられる。だから塾で成績があがっても、表立ってあまり感謝されない。塾はいつでも「成績を上げるためのツール」としてしか捉えられないのだ。塾特有の寂しさを感じる。けれど、一之瀬は次のように語る。

子供たちとの接点は、ほんのわずかであっても、その一瞬にすべてを注いでいく。しかも学校とは違って、明日にはその子は辞めてしまうかも知れない。だからこそ、今という瞬間を絶対にムダにはできあに。それが塾の現場だ。
 たとえ一瞬でも、たとえお礼の言葉をかけてもらえなくても、人生のほんのわずかな時間的空間を共有できたことに感謝したい。いつか、一人ひとりの心に蒔いた種が、小さな花を咲かせることを願って。(197頁)

 一期一会の出会いを大切にし、生徒と相互行為(社会学的な言い方です)を結べた一瞬の輝きを大切にする。塾経営者が大事にする視点だろう。塾という教育の場(トポス)で現実に教育を行い続ける筆者の熱い志が感じられる。ぜひお会いしてお話をしたい人だ。

 この本からは塾業界での成功の仕方と言うよりも、「プロフェッショナル論」を教えられた。
 

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