『ドラゴン桜』では、「バカとブスこそ'東大’へ行け!」と力説いていた。この本は恐ろしい本である。「東大大学院は入りやすい!」を何度もいうことで「大学院で学歴を'東大’という最高のブランドに変えよう」と提言する。東大などの諸大学院が「大学院重点化」という失策を行っていることを逆手にとっての提言である分、ラディカルながら本書は大学院政策のあり方を読者に訴えかけるものとなっている。
本書では、この言葉をパロディにして、「バカ」と「ブス」そして「人生の負け組」こそ、'東大大学院’へ行け! と力説したい!(p11)
本書の白眉は「どうやればカンタンに東大大学院に行けるか」という箇所ではない。東大の傲慢さを徹底的に批判するChapter 8が肝心なのである。
ところで『新・大学教授になる方法』という本がある。この本には「10年間の無収入時代を耐えることができれば大学教授になれる」ことを謡っている。『新・大学教授になる方法』と『学歴ロンダリング』は同じ事実を肯定的/否定的に評価しているだけなのだ。『新・大学教授になる方法』は「しばらく食えないけれど、耐えれば大丈夫」といい、『学歴ロンダリング』は「食えない期間は非常にキツい」ことを言っている本なのである。厳密には書かれた時期の問題でポスドク問題などの現代特有の問題が起きており、『新・大学教授になる方法』はポスドク問題などには対応していない。その点での問題点はあるようだが、基本的に研究者という生き方は「若いうちは食えない」ものなのであろう。
はっきり言って、大学院の定員数の急激な拡大は、単純に大学の予算拡大を狙って行われたものです。学問の発展や社会の要請、果ては人材の育成云々と言った理由はまったくの建前です。
少子化に伴って自然減少していくことが明白な学生数を、一時的に増大させるのに最も効果的な方法は、定員の拡大です。
大学院の定員の拡大は、学部の定員をまったく増やすことなく大学全体の定員を拡大させる魔法でした。なにしろ大学院は大学とは「別」なのですから。
この戦略を真っ先に実行したのが東大法学部です。
(中略)
東大は、日本の大学の中では絶対的な存在なのです。そうであるからこそ、東大が改革を行えば、必ず他大学も改革せざるをえない事態になるのです。(p323)
私は幸運にも、文系の中では比較的就職率の高い教育学を先行している。これはいざとなったら「教員」というカードを切れるということが大きいようだ。看護学校の必須科目でも「教育学」の授業があるなど、「教育」分野には潜在的需要が存在しているのだ。ありがたいと言ったらありがたい話である。
この本を読み、人生プランについて改めて考えてみた。「修士にいくのはお勧め。でも博士課程はやめといた方がいい」とのメッセージを受け、「本当に俺は博士課程にいくべきなのだろうか?」と思ったからである。
いろいろあって、最終的な結論として、
①修士課程は行く。できれば東大。
②修士を終えたら、一度社会に出る。それは教員や出版関係である。
③働きながら社会人枠で博士課程に入る。
こういうルートを考えていないと、研究者として生きていけない。博士課程卒は食えないからだ。
それにしてもニコニコ動画「創作童話 博士が100人いる村」のラストシーンは印象的だった。
5 件のコメント:
「学歴ロンダリング」著者の神前です。
書評ありがとうございます。
2月23日発売のAERAに「学歴ロンダリング」が特集されました。他大学院への進学がメジャーになりそうな気配がしてなりません。
ブログも書いています。
http://d.hatena.ne.jp/power-ocean/
「学歴ロンダリング」著者の神前です。
書評ありがとうございます。
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わざわざ、ありがとうございました。
AERA、読ませていただきます。
自分の進路も、早稲田→東大のロンダリングするか、考えています。
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