フリースクールの運営に関する、社会学的考察。
1、3年時の研究を振り返って。
私は3年生の間、フリースクールを専門に研究をしてきた。フリースクール関連のみの流れを示すと、下のようになる。
①発表および見学
●(2年時の研究)東京シューレ理事長・奥地圭子氏へのインタビュー
●(2年時の発表)フリースクールに関する、教育社会学的考察
→フリースクールの定義と東京シューレの実践例の紹介。
●(発表)八王子市立高尾山学園の事例検討
→フリースクール的手法を取り入れた公立学校の事例紹介。
●(見学)東京シューレ葛飾中学校への見学。
→東京シューレが作った学校。
●(発表)フリースクールきのくに子どもの村学園の事例検討
→ニイル思想にもとづく、学校法人をもつフリースクール。
●(見学)フリースクール夢街道子ども園の見学
→未発表。2008年夏に見学に行く。
●(発表)イリッチのラーニング・ウェッブの研究
→イリッチのいう「学習のためのネットワーク」は現代のブログによって実現可能ではないか、という考察。
②書評
●『教育なんていらない』
→教育こそは権力である。教育関係にある限り、人は他者からの支配から逃れることはできない。この点を著者独特のスタンスから追求する本。
●灰谷健次郎の小説・エッセイ(『灰谷健次郎の幼稚園日記』『いのちまんだら』など)
→子どもへのまなざしや現在の教育への批判、あるべき教育像の考察。
●広田照幸『教育には何ができないか』
→人びとは過去に幻想をもっている。「昔はしつけが行き届いていた」など。けれどこれはあくまで幻想でしかない。現代にないものが過去にはあった、と人びとは思い込んでいる。
2、4年時の研究について
3年時、いくつかのフリースクールへの見学と、そのフリースクールの見学報告としての発表を行った。実際にフリースクール関係者の話を伺うことで、研究の視点も広まってきた。
けれど教育学の書籍(特に近代教育批判のもの)は読んできたが、オルタナティブスクールやフリースクールに関する書物はまだまだ読めていない。
4年時では見学に数多く行くのは当然として、オルタナティブスクールに関する書物を中心的に研鑽していきたい。また4年時からNPO法人フリースクール全国ネットワークの運営をボランティアとして手伝わせて(主に雑用だが)いただくことになったので、そこからも学んでいきたい。
3、卒論の方向性
現在の日本のフリースクールの取り組みに着目した上で、これからのフリースクール運営のあるべき姿を考察する。
不登校の子どもなど既存の学校教育があわない子どもは多くいる。けれどその人たちが皆フリースクールに通っている訳ではない。その理由には A,情報の不足(フリースクールを知らない、あるいはどこにあるのか分からない)、B,資金の不足(フリースクールに通いたくとも家に費用がない)、C,設備の不足(フリースクールが近くにない)、D,理解の不足(主に心理面。「フリースクールに通うのは恥ずかしい」など)の4点があると考える(注 A~Dの項目は、ヒト・モノ・カネ・情報という四要素に対応している)。
子どもの教育権を守るためにも、このA~Dの解決を図っていくべきだ。フリースクールの見学で得た知見や書物による学習、NPOやボランティアについての研鑽を踏まえた上で、卒論ではこの方向性を探っていく。
全体の構成は次のものを想定している。
⑴フリースクールの定義説明
⑵ ⑴の補足説明のために、フリースクールの実例を紹介する(東京シューレを元にする)。
⑵必要とする子どもがフリースクールに通えるようにするための四要素の提示(上のA~D)。
⑶四要素の解決のための方策の提示。
⑷結論
なお、現時点ではBを解決するための方法として下のものを考えている。
「B,資金の不足」を解決するために。
①フリースクールの学校化。
いまの学校行政のシステムでは、私立学校には私学助成が行われる。これを活かすことにより、学校の授業料を減らすことができる。東京シューレ葛飾中学校はこれを活用したため、フリースクールの東京シューレよりも毎月の授業料を1万円近く削減することができた。
奥地圭子は「東京シューレの葛飾中学校を作って、フリースクールだったら絶対にこなかった親や子どもと関われるようになった」と言っていた。「学校」の名であるので、心理的負担なくフリースクールに関わることが可能になる(Dの解決にもつながる)。
②公立学校にフリースクールの手法を取り入れる。
公立学校にフリースクールの手法を取り入れることで、フリースクールにかかる費用を削減することができる。公立の学校であるためだ。
八王子市立高尾山学園という公立学校がある。小四から中学生までが通う学校だ。この学校は八王子の公立校で不登校になった子どもを中心的に受け入れている学校だ。
③フリースクールに現在以上の公的支援を行う。
地方公共団体や政府からの支援を行う。これについて次の2つの視点から考えていく。
a,税金が学校に使われているという視点から。
これは【学校に通っている子どもには、年間95万円分、税金が入っている】という点から考えることができる。現在、フリースクールに通う子どもは、この95万円を無駄に使っていると言える。奥地圭子は「フリースクールにも利用可能ならば、学校バウチャー制度を導入すべき」といっていた。
全てとはいわないまでも、フリースクールに通う子どもに税金が使われなければ、何のために税金を納めているのかが分からなくなる。
b,NPOへの支援としての視点から。
近年、政府や地方公共団体からNPOの事業に支援が入ることが多くなった。NPO法人が制度で決められてから10年が過ぎ、NPOの重要性が意識されるようになってきたのである。フリースクールをNPOとして運営する所も今は多い(東京シューレや夢街道子ども園など)。NPOの活動へ支援が多くなっている今、フリースクールにも支援が増えていくべきであろう。
けれど、ただ支援を受ければいい訳でない。委託事業という支援形態がある。資金の支援があるが、「この資金はこの事業に使わなければならない」という資金である。フリースクールがこの資金を受けた場合、本来のフリースクールの運営以外の所に資金を使わなければならなくなってしまう。おまけにこの委託事業は一年単位。継続性が難しい。
政府や地方公共団体からの支援は必要だが、自覚的に支援を活用しなければ、活動がかえって疎外されてしまう危険性がある。
④寄付/会費を増やす。
①~③はいずれも公的支援を受けるための方法である。けれどフリースクール本来の働きを行うためには民間/個人からの寄付を多く集められる運営が好ましい。公的支援を受けると、どうしてもフリースクール本来の活動ができなくなる恐れがあるからだ。自由な活動が制約される恐れがある。
財政面の安定化のために会費を集める/寄付を多く集められる工夫を行っていくことも重要である。
⑤利用者負担を可変勾配化する。
保育所の中には入所時に親の源泉徴収を提示する必要のある場所がある。額により、保育料金が変化する仕組みだ。これが可変勾配である。無認可保育園でも、親の納税額にもとづいて可変してくれる。フリースクールでもこれを実践すべきではないか。安易に料金を低く一定化することは必ずしもよいことではない。よい教育に金がかかるのは事実である。これを認めた上でなるべく多くの人が利用できるように考えていくべきであろう。
以上。
2009年3月26日木曜日
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1 件のコメント:
こういう事件が実際にあったら面白くない?
アメリカのフリースクールで銃乱射 5人死亡、11人負傷
[USO]1日2時9分
カリフォルニア州南部にあるフリースクールで、現地時間の31日、9時ごろ、少年が銃を乱射し5人を殺害し、11人に重軽傷を負わせた。
複数の現地メディアは、犯人の少年は黒いトレンチコートのような服を着ていたと報道。地元警察によると、少年は銃を乱射後に、玄関で銃で自分の頭部を打ち抜き自殺、フリースクールの生徒はすでに避難しており、現場では救急隊員らが対応に当たっている。
私のブログ「アメリカ銃事件報告の書」のカテゴリー「USOニュース」の記事より一部抜粋 詳しくは(全文は)「アメリカ銃事件報告の書」にて
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