読書会で使用するため、岩波書店の志向のフロンティアシリーズの『公共性』を読了した。アーレントをもとに公共性を説く。若干、理解に及ばないところもあったが、だいたいにおいて興味深い内容であった。
悩みや葛藤・「ためらい」がある状態こそ人間の本源的状態である、と内田樹は言う。アーレントもその認識に基づいている(あ、時期的に見ても真逆か)。自己の中にひとつのイデオロギーが確固として存在している状態を、危険な状態だと彼女は指摘する。個人の中に多くの他者の声が響き、その中で悩み、考えることに人間の崇高さを説く。
アーレントにとって、「他者」とはコミュニケーション可能な存在のみをさすのではない。重度の障害者や赤ん坊すらも「他者」と認識する。
世界は他者の数の分だけ豊かになり、誰か一人が世界から退場することはそれだけ世界が貧しくなる、とアーレントは説明する。ここでいう世界とは人間世界だけでなく、「わたし」の内面世界のことでもある。
異質な他者を尊重するのは、その分だけ自分の内面世界が豊かになるからである。異質な他者を排斥することは自分の内面世界をそれだけ貧しくすることにつながる。
ひとりの他者をどこまでも尊重する(平易に言うと、「一人を大切にする」ということ)という行動は、自己の生命(=内面世界)を豊かにするための戦いであるともいえる。他者の他者性を尊重した分、自分の内面世界に「他者」が増え、より豊かに生きれるようになる。はずである。
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